無酸素性代謝閾値


ランニングのような持久的な運動を続けるためには、運動中に筋肉が取り込む酸素を常に供給してあげる必要があります。

しかし、運動強度(ランニングで言えば走るスピード)を上げると、あるポイントを境に酸素を使ったエネルギーの生成経路だけでは必要なエネルギーを生み出せなくなります。


その境目の強度のことを「無酸素性代謝閾値」といいます。

 


人が持つ2つのエネルギー生成システム


筋肉は体内に取り込んだ酸素を使って運動する以外に酸素を使わなくてもエネルギを生み出すシステムが備わっています。


ここではこれを「無酸素系システム」と呼びます。

これに対して、日常生活やゆっくりなスピードのランニングでは運動強度が極端に上がることはないので酸素を使ってエネルギーを作ることができます。


このシステムを「有酸素系システム」と呼びます。

このように人の体は「無酸素系システム」と「有酸素系システム」という2つの仕組みを持っています。


マラソンランナーとして知っておきたい「無酸素系システム」と「有酸素系システム」の違いは筋肉が脂肪をメインに使って働くか糖をメインに使って働くかです。

 

以降で、筋肉に関してさらに詳しく説明していきます。

 


有酸素系、無酸素系で使われる筋肉の違い


筋肉は数万から数百万本の「筋繊維」を束ねたもので、筋繊維には「遅筋繊維」と「速筋繊維」という2つのタイプがあります。

Tarzan No.636
Tarzan No.636

◆ 遅筋

 

遅筋は有酸素系システムの柱です。
筋肉が収縮して運動するスピードは遅いのですが、小さな力を持久的に発揮するのが得意な筋肉です。

 

遅筋には毛細血管がたくさんついていて酸素を効率的に取り込めます。
また、取り込んだ酸素をもとにエネルギーを生み出すミトコンドリアも数多く含んでいます。

 

◆ 速筋

 

速筋は無酸素系システムの柱です。

 

筋肉が収縮するスピードが早く大きな力が出せるため、瞬発的な運動に向いています。
100mなどの短距離走で大活躍する筋肉です。
毛細血管の密度は遅筋よりも低く、含まれるミトコンドリアの数も少なくなっています。

すべての筋肉は遅筋と速筋をブレンドしたものです。
遅筋のみでできた筋肉も速筋のみでできた筋肉もありません。

 


ランニングにおける遅筋、速筋の関係性


遅筋と速筋には運動強度が低いうちは遅筋が使われて、運動強度が高くなると遅筋に加えて速筋も働くという性質があります。

ランニング中、遅いスピードで働いているのは遅筋で、スピードを上げていくと速筋の使用率が一気に上がります。
そして、速筋の使用率が一気に増えるポイントが無酸素性代謝閾値です。


このとき「乳酸」という代謝物が生まれます。

速筋で生じた乳酸は遅筋に運ばれて有酸素系システムを介してエネルギーを生み出すためのエネルギー源になります。

 

しかし、この乳酸をつくるためには糖が必要です。
糖は体内にごくわずかしか蓄えられないので、乳酸が生じるような速いスピードで走ってしまうと、早い段階で糖がなくなるのでペースダウンしてしまいます。

 

このターニングポイントもまた無酸素性代謝閾値といえます。

無酸素性代謝閾値のぎりぎり手前なら、体内に限られた量しか貯蔵できない糖をあまりつかわずに大量に蓄積されている脂肪をフルに活用しながらランニングを続けられます。

フルマラソンも無酸素性代謝閾値の範囲内ならスタートからゴールまで一気に走り切ることができます。

 

実際、無酸素性代謝閾値とマラソンの記録には相関があり、無酸素性代謝閾値が高い人ほどタイムがよくなる傾向があります。

 

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